2026/08/31 10:51
朝。
僕はいつものように、テラヘルツブロワーを手に取った。
もう、特別なことではない。
歯を磨く。
顔を洗う。
そして、テラヘルツブロワーを使う。
いつの間にか、
そんな毎日になっていた。
ふと、僕は思った。
最初のころは、
こんな日が来るなんて思っていなかったな。
そもそも僕は、
テラヘルツブロワーに興味なんてなかった。
妻が使っているのを見ても、
「何してるんだろう」
くらいにしか思っていなかった。
むしろ、
「また何か買ったの?」
くらいに思っていた。
ところが。
ある日。
妻がいない隙に、
ちょっとだけ使ってみた。
本当に、
ちょっとだけだった。
……はずだった。
「へえ」
と思った。
もう一回。
「……悪くないな」
さらにもう一回。
そして気づいた。
僕、
けっこう気に入ってる。
そこからだった。
僕のテラヘルツブロワー生活が始まった。
妻にはすぐバレた。
当然である。
隠れて使っているつもりでも、
毎日使っていれば、
そりゃバレる。
「あなた、使ったでしょう?」
「あ……うん」
「気に入った?」
「……うん」
妻は笑った。
「じゃあ、使えばいいじゃない」
そのときは、
なんとなく恥ずかしかった。
男がこんなものにハマるのもどうなんだろう、
と思った。
でも。
使っているうちに、
そんなことはどうでもよくなった。
気に入ったものは、
気に入った。
それでいい。
そして。
僕はついに、
自分専用の一台を手に入れた。
あのときは嬉しかった。
本当に嬉しかった。
「これで自由に使える!」
そう思った。
……まあ。
その後、
置き場所を妻に決められたり、
「ちゃんと片付けてね」
と言われたり、
家族会議の議題になったりしたけれど。
それも、
今となっては笑い話だ。
僕は笑った。
そういえば。
この日記では、
いろんなことを書いてきた。
妻にバレたこと。
こっそり使っていたこと。
専用機ができたこと。
新しいものをすすめられたこと。
そして、
そのたびに僕は、
「もうこれ以上はないだろう」
と思っていた。
でも妻は、
いつもその先を持ってきた。
「ねえ、あなた。これも試してみない?」
あの言葉を、
何度聞いただろう。
そして僕は毎回、
「ちょっとだけだからね」
と言った。
……一回だけだったことは、
ほとんどない。
妻には、
全部バレていたと思う。
僕はふと、
妻のほうを見る。
妻はいつものように、
何でもない顔をしている。
「なに?」
「いや……」
僕は少し考えてから言った。
「ありがとう」
妻が驚いた顔をする。
「何、急に?」
「いや」
僕は照れくさくなって、
テラヘルツブロワーを見る。
「これ、すすめてくれたの、君だったから」
妻は笑った。
「そうだったわね」
「最初は、そんなに興味なかったんだけど」
「知ってる」
「でも、今は毎日使ってる」
「知ってる」
……。
全部知っている。
さすが妻だ。
僕は笑った。
そして思った。
この日記を書いてきて、
一番感じたこと。
それは、
テラヘルツブロワーそのもののことだけじゃない。
妻が、
僕に「やってみたら?」とすすめてくれたこと。
僕が、
「じゃあ、ちょっとだけ」と試してみたこと。
そして、
一緒に笑ったこと。
たぶん僕にとっては、
そういう時間のほうが大事だったのだと思う。
毎日の中には、
大きな出来事なんて、
そんなにたくさんない。
でも、
「ちょっと試してみる?」
「どうだった?」
「意外といいね」
そんな小さな会話が、
思っていた以上に、
毎日を楽しくしてくれる。
僕はそう思う。
そして。
僕のテラヘルツブロワー生活は、
これからも続いていく。
朝になれば使う。
疲れた日にも使う。
妻と、
「今日はどうだった?」
なんて話しながら使う日もあるだろう。
そしてきっと、
妻はまた何か新しいものを見つけてくる。
「ねえ、あなた。これも試してみない?」
僕はたぶん、
「また?」
と言う。
でも。
そのあと、
「……ちょっとだけなら」
と言う。
妻は笑う。
僕も笑う。
きっと、
これからもそんな毎日だ。
だから。
この日記は今日で終わるけれど、
僕の毎日は、
まだまだ続いていく。
テラヘルツブロワーをきっかけに、
少しだけ自分のことを気にするようになった。
少しだけ、
新しいものを試すようになった。
そして何より、
妻とくだらないことで笑う時間が、
前より少し増えた。
それだけでも、
十分だったと思う。
最後に。
この日記を読んでくれた皆さんへ。
僕の、
「ちょっとだけ使ってみよう」
から始まった話に、
最後まで付き合ってくれて、
本当にありがとうございました。

最初は、
こんなに続くとは思っていませんでした。
正直、
僕自身も驚いています。
でも。
振り返ってみると、
なんだか楽しかった。
僕の毎日の小さな変化を、
一緒に笑ってもらえたこと。
「分かる分かる」と思ってもらえたこと。
それだけで、
この日記を書いてきてよかったと思います。
……まあ。
最後だから言いますけど。
僕の専用機。
最近、
妻が普通に使っています。
「これ、僕専用なんだけど」
と言ったら、
妻が、
「夫婦専用でいいじゃない」
と言いました。
……。
まあ、
いいか。
僕は笑った。
妻も笑った。
そして僕は、
いつものように、
テラヘルツブロワーを手に取った。
これからも、
きっとこうやって、
妻と笑いながら、
毎日を過ごしていくのだろう。
特別じゃない。
でも、
ちょっと楽しい。
そんな毎日が、
僕はけっこう好きだ。
――テラおじ日記。
これにて、おしまい。