2026/08/26 10:16
こんにちは、ごきげんマダムです。
朝、カーテンを開ける。
まだ暑い。
蝉も鳴いている。
けれど、ほんの少しだけ。
ほんの少しだけ、風が違う。
夏の真ん中にいるときには気づかなかった、涼しい風が混じっている。
私はいつものように朝の支度をして、テラヘルツメーターの青い面に両足をそっと乗せました。
足裏をあずけながら、ぼんやり窓の外を見る。
「……夏も、そろそろ終わりなのね。」
そう呟いたところへ、主人がやってきました。
「何が?」
「夏。」
「まだ暑いけど。」
「そういう問題じゃないのよ。」
主人はしばらく私の顔を見て、
「……今年も早かったね。」
と言いました。
私は頷きました。
「ええ。」
そして、少し考えてから言いました。
「ねえ、あなた。」
「うん。」
「そろそろ夏物を片づけましょうか。」
主人は即答しました。
「やっと?」
失礼ね。
マダム、夏物を片づける
私はクローゼットを開けました。
白いワンピース。
帽子。
サンダル。
日傘。
薄手のバッグ。
夏の間、ずいぶんお世話になったものたちです。
私は一枚ずつ手に取りました。
「これは来年も着るわ。」
「うん。」
「これは……まだ着る。」
「うん。」
「これは、ちょっと考える。」
主人が聞きました。
「何を考えるの?」
「来年の私が、これを着たいと思うかどうか。」
「今年も着てなかったよね。」
「……。」
主人。
最近、妙に正確です。
帽子が多すぎる問題
そして、最後に帽子。
私は帽子を並べました。
ひとつ。
ふたつ。
みっつ。
……。
主人が数え始めました。
「これ、全部いる?」
私は答えました。
「いるわ。」
「なんで?」
「帽子だから。」
「答えになってないよ。」
私は一番お気に入りの帽子を手に取りました。
第12回で買った、あの帽子。
上品なリボンがついた帽子です。
あのときは、
「今年の夏は、これで完璧。」
なんて思っていました。
今見ると、なんだか懐かしい。
私は帽子を頭に乗せて、鏡を見ました。
「どう?」
主人が笑いました。
「似合ってるよ。」
「でしょう?」
「でも、それ片づけるんじゃなかったの?」
私は帽子を脱ぎました。
「……そうでした。」
夏の思い出は、クローゼットには入らない
服をしまいながら、私は今年の夏を思い出しました。
暑かった。
とにかく暑かった。

でも、それだけじゃない。
白いワンピースを着た日。
ホテルのラウンジで、くだらないことに悩んだ日。
主人と過ごした日。
台風の日に、家の中でごちそうを並べて籠城した日。
町内会のラジオ体操。
そして、盆踊り。
……ずいぶん遊んだものです。
主人が言いました。
「今年は、いろいろやったね。」
私は笑いました。
「そうね。」
「来年もやる?」
「もちろん。」
私は即答しました。
けれど、そのあと少し考えて、
「……来年は何をしましょうか。」
と呟きました。
ごきげんマダム、予定を立てる
私はテーブルに座りました。
そして紙とペンを取り出します。
「来年の夏にやりたいことを書いてみましょう。」
主人が覗き込みます。
「何を書くの?」
私は書きました。
一、浴衣を着る。
「今年も着たよね。」
「来年はもっと上手に着るの。」
二、盆踊りで主人に勝つ。
「まだ言ってるの?」
「当然です。」
三、ラジオ体操に毎日参加する。
主人が笑いました。
「今年は何日行った?」
私は黙りました。
「……それは来年の目標ということで。」
「今年できなかったことを、来年も書くんだ。」
「目標は継続が大切なのよ。」
そして、
四、まだ行ったことのない場所へ行く。
ここで、私はペンを止めました。
「……これ、いいわね。」
主人も頷きました。
「うん。」
「まだ行ったことのない場所」
考えてみれば、
行ったことのある場所ばかりを選んでいたかもしれません。
好きな場所。
安心できる場所。
居心地のいい場所。
もちろん、それも大切。
でも、
知らない場所。
知らない人。
知らないこと。
そういうものに出会ったとき、
人生は少しだけ面白くなる。
私は主人に言いました。
「ねえ。」
「ん?」
「来年は、二人で知らないところに行きましょう。」
主人は少し笑って、
「いいね。」
と言いました。
「どこへ?」
私は答えました。
「それは、これから考えるの。」
「まだ決まってないんだ。」
「人生なんて、そんなものよ。」
主人が笑いました。
私も笑いました。
夏をしまうということ
夕方。
片づけ終わったクローゼットを眺めました。
夏物は、しばらく眠ります。
でも、夏が終わるわけではありません。
来年になれば、また出番がやってくる。
帽子も。
白いワンピースも。
浴衣も。
そして、
今年の思い出も。
私はクローゼットの扉を閉めました。
「また来年ね。」
主人が後ろから言いました。
「誰に言ってるの?」
「みんなによ。」
「服に?」
「服にも。」
主人は笑いました。
今日のごきげんスイッチ
季節が変わると、
「終わってしまう」
と思うことがあります。
でも、
終わるものばかりではありません。
次の季節が始まるだけ。
今日できなかったことは、
明日やればいい。
今年できなかったことは、
来年やればいい。
そして、
今年楽しかったことは、
ちゃんと覚えておけばいい。
私は今年の夏、
思った以上にいろいろなことをしました。
笑いました。
少し張り切りすぎました。
主人とも、たくさん笑いました。
だから、
今年の夏には、
「ありがとう」
と言っておこうと思います。
今日の研究結果
ごきげんに暮らすためには、
新しいものを手に入れることだけが大切なのではありません。
今までの時間を、
「楽しかった」と思って眺めること。
そして、
「次は何をしようか」
と考えること。
この二つがあれば、
季節が変わっても、
ごきげんは続いていくのだと思います。
さて。
夏物の片づけも終わりました。
あとは秋を迎えるだけ。
……と思ったら。
主人が言いました。
「その帽子、まだ出てるけど。」
私は帽子を見ました。
第12回で買った、お気に入りの帽子。
私は少し考えました。
そして、
「これはね。」
帽子をかぶりながら、
「秋にも似合うのよ。」
主人が笑いました。
「片づける気ないじゃん。」
私は鏡を見て、
「ごきげんに季節をまたぐの。」
と答えました。
だって、
お気に入りは、
簡単にはしまえませんもの。
それでは皆さま。
夏の終わりに、ひとこと。
終わるから寂しいのではなく、次があるから楽しみなのです。
今日もごきげんに。
そしてもちろん、
ごきげんスイッチ、オン。
🌻 ごきげんマダムの今日のひとこと
「夏物はしまえても、ごきげんはしまいません。」