2026/08/20 18:18
こんにちは、ごきげんマダムです。
夏の朝は早い。
蝉が鳴き、カーテンの向こうから太陽が顔を出す。
私はいつものように冷たいお水をいただき、ゆっくり朝の支度をします。
そして、朝の習慣。
テラヘルツメーターの青い面に両足をそっと乗せる。
足裏をあずけながら、今日の予定を考えます。
すると主人が新聞を読みながら、何気なく言いました。
「今度の土曜日、町内会の盆踊りだって。」
私は一瞬、手を止めました。
盆踊り。
……。
「あなた。」
「ん?」
「私たちも行きましょう。」
主人が新聞から顔を上げました。
「……また町内会?」
「ええ。」
「ラジオ体操の次は盆踊り?」
「地域との交流は大切よ。」
主人は小さく笑いました。
「ずいぶん地域に馴染んできたね。」
そういうことです。
私は今、
町内会に目覚めつつあるのです。
浴衣は「ちょっと」で済まない
盆踊りと聞いたからには、浴衣です。
私はクローゼットを開けました。
浴衣。
帯。
バッグ。
扇子。
下駄。
そして髪飾り。
「あら……」
出てくる。
出てくる。
自分でも驚きます。
主人が後ろから覗き込みました。
「そんなに持ってたの?」
「女性にはね、いろいろあるのよ。」
「全部、盆踊り用?」
「……昔のものもありますけど。」
私は一枚の浴衣を広げました。
涼しげな柄。
上品な色合い。
そして帯。
鏡の前で合わせてみます。
いい。
非常にいい。
私は主人に聞きました。
「どう?」
主人は少し考えて、
「いいんじゃない?」
と言いました。
私は振り返りました。
「それだけ?」
「うん。」
「もっと何かないの?」
主人は困った顔をしました。
「……すごく似合うよ。」
「最初からそう言いなさいな。」
そして、盆踊り当日
夕方。
公園には提灯が並び、中央にはやぐら。
子どもたちは走り回り、
近所の皆さんが次々と集まっています。
私は主人と一緒に到着しました。
「こんばんは。」
「まあ、奥さん!」
「ラジオ体操以来ね!」
「今日は浴衣なのね。素敵!」
私は笑顔でご挨拶。
なんでしょう。
すっかりご近所さんです。
少し前まで、
「町内会って、どんなものかしら?」
などと思っていた私が、
今では普通に馴染んでいます。
人生、何が起きるか分かりません。
「踊れるの?」と聞かれまして
音楽が始まりました。
太鼓の音。
盆踊りの音楽。
皆さんが輪になって踊り始めます。
私は主人に言いました。
「あなた、踊れる?」
「まあ、見よう見まねで。」
「そう。」
私は少し胸を張りました。
「私は大丈夫よ。」
主人が私を見ました。
「……踊ったことあるの?」
「ないわ。」
「じゃあ、なんで大丈夫なの?」
私は答えました。
「見れば分かるでしょう。」
何が分かるのか。
私にも分かりません。
マダム、意外な才能を発揮する
音楽に合わせて、
右へ。
左へ。
手を上げて。
くるり。
また右へ。
左へ。
私は思った以上に踊れました。
「あら。」
楽しい。
これは楽しい。
私はどんどん調子に乗りました。
手を高く上げ、
腰をひねり、
くるりと回ります。
すると隣のおばさまが、
「奥さん、上手ねえ!」
と声をかけてくださいました。
私は、
「まあ、そうかしら?」
なんて言いながら、
さらに張り切りました。
すると主人が横から、
「ちょっと張り切りすぎじゃない?」
と。
私は無視しました。
だって、
褒められたんですもの。

ところが、主人のほうが……
しばらく踊っていると、
主人の動きが妙に滑らかなことに気がつきました。
「あなた。」
「ん?」
「なんでそんなに上手なの?」
主人は笑いました。
「子どもの頃、毎年踊ってたから。」
「聞いてないわ。」
「聞かれてないからね。」
なんということでしょう。
私が必死に周りを見ながら踊っている横で、
主人は余裕の表情。
手の動きもきれい。
足取りも軽い。
私は主人を見ながら踊りました。
……。
ちょっと悔しい。
マダム、勝負を挑む
曲が終わりました。
私は主人に近づいて言いました。
「あなた。」
「なに?」
「来年は私のほうが上手に踊ります。」
主人は目を丸くしました。
「なんで勝負になってるの?」
「いいのよ。」
「誰と?」
「私とあなた。」
主人は笑いながら、
「じゃあ、来年まで練習する?」
と言いました。
私は少し考えました。
そして、
「……そうね。」
と答えました。
その顔を見て、主人が笑いました。
「本気なんだ。」
もちろんです。
私は負けず嫌いですから。
帰り道の小さな幸せ
盆踊りが終わり、夜の公園を出ました。
提灯の明かりが少しずつ遠ざかっていきます。
主人が言いました。
「楽しかったね。」
私は、
「ええ。」
と答えました。
そして、少し歩いてから、
「ねえ。」
「ん?」
「来年も来ましょうね。」
主人は笑いました。
「もちろん。」
私はその横顔を見ました。
高級なレストランで食事をするのも好き。
ホテルのラウンジでお茶をするのも好き。
素敵なものに囲まれて暮らすのも、もちろん好き。
でも。
こうして主人と並んで、
近所の人たちと笑って、
少し汗をかいて、
くだらないことで張り合って。
そんな夜も、
悪くありません。
いえ。
かなり好きです。
今日のごきげんスイッチ
人生には、
「今さら」
と思うことが、たくさんあります。
今さら町内会?
今さらラジオ体操?
今さら盆踊り?
でも、
やってみたら案外楽しい。
年齢を重ねると、
「私はこういう人間だから」
と自分で自分を決めてしまいがちです。
でも、たまにはそこから、
ちょっとだけはみ出してみる。
すると、
思いがけない楽しみが見つかることがあります。
私の場合は、
町内会でしたけれど。
今日の研究結果
ごきげんに暮らす秘訣は、
「自分らしくいること」。
そしてもうひとつ。
自分らしくないことも、たまにはしてみること。
ラジオ体操をして、
盆踊りまで踊る。
次は何かしら。
主人が、
「次は町内会の清掃かな」
と言っていました。
私は即答しました。
「それは考えさせて。」
そこは、
自分らしくいたいと思います。
それでは皆さま。
夏の夜には、提灯の明かりを眺めながら、
少しだけいつもと違うことを。
そして今日も、
ごきげんスイッチをオン。
また次回、お会いしましょう。
🎐 ごきげんマダムの今日のひとこと
「盆踊りは、踊るもの。夫婦の勝負にするものではありません。」
……と言いつつ、来年は絶対に主人より上手に踊るつもりです。
もちろん、秘密の特訓をします。
町内会の皆さんには内緒です。