2026/08/03 16:24

窓から差し込む光。

風に揺れる緑。

素足に触れる、少しざらりとした敷物。

遠くで鳥が鳴いている。


それ以外は、何もない。

何もしなくていい。

誰かに返事をしなくていい。

今日の予定を考えなくていい。

未来の心配をしなくていい。

ただ、ここにいる。

それだけでいい。



私たちは、あまりにも長いあいだ、

「何かをすること」に慣れすぎている。


頑張る。

考える。

選ぶ。

決める。

前へ進む。


立ち止まっていると、
置いていかれるような気がして。

何もしていない時間にさえ、

「こんなことをしていていいのかしら」

と、心のどこかで思ってしまう。


けれど。

本当は、何もしない時間こそ、

自分の深いところへ還る時間なのかもしれない。



彼女は、ただ座っている。

目を閉じているわけでもない。

何かを唱えているわけでもない。

ただ、足を大地に預けている。


その足元には、テラヘルツメーター。



ただ、そこに足をのせる。

そして、自分の身体を感じる。



不思議なことに。


私たちは、頭の中ではどこへでも行ける。


昨日へ戻ることもできる。


まだ来ていない明日へ飛んでいくこともできる。


誰かの言葉に傷ついた場所へ、
何度でも戻ることができる。


起きてもいないことを想像して、
何度も不安になることもできる。


けれど、身体はいつも、

今ここにしかいない。


足は、今ここにある。

呼吸も、今ここにある。

この瞬間のあなたも、

今ここにしかいない。



だから、足元に意識を向ける。


素足で床に触れる。

大地を感じる。

テラヘルツメーターに足をのせる。


そして、何も考えずに、

ただ、ここにいる。


すると。

頭の中を飛び回っていた自分が、

少しずつ戻ってくる。


遠くへ行っていた意識が、

身体の中へ戻ってくる。


まるで、

「もう、帰ってきていいよ」

と、誰かに呼ばれているように。




グラウンディングは、

特別な場所へ行くことではない。

どこか遠くへ旅をすることでもない。


むしろ、

自分のいる場所へ戻ってくること。


今いる部屋。

今いる身体。

今いる時間。


そこに、もう一度気づくこと。



窓の外の緑は、

何も急いでいない。


光は、

何かを証明しようとしていない。


植物は、

誰かに認められるために葉を広げているわけではない。


ただ、そこにいる。

ただ、光を受けている。

ただ、呼吸している。


そして、私たちも本当は、

それでいいのかもしれない。



何もしない。

考えない。

急がない。


ただ、足元を感じる。


その静かな時間の中で、

ふと気づく。


私は、どこかへ行かなくてもいい。

何者かにならなくてもいい。


すでにここにいる。

ずっとここにいた。


ただ、少し遠くへ行きすぎていただけ。



テラヘルツメーターに足をのせる。

窓から光が差し込む。

緑が揺れる。

静かな部屋に、

自分の呼吸だけがある。


そのとき。


もしかすると、

大地の奥深くから、

小さな声が聞こえるかもしれない。


「おかえり」

と。


そしてあなたは、思い出す。


還る場所は、

どこか遠くにあるのではない。


あなたの足元に。

あなたの身体の中に。

あなたが今、

静かに座っている場所に。


ずっと、あったのだと。