2026/07/28 10:27


朝。

まだ世界が完全に目を覚ます前。

私は、テラヘルツメーターに足をのせる。

いつものように。



けれど、ふと考えることがある。

この足は、いったいどこから来たのだろう。


昨日まで歩いてきた道。

これまで選んできた人生。

そのもっと前。


まだ名前もなく、
何者でもなかった頃。

私は、どこにいたのだろう。



私たちは、毎日を生きている。


仕事をして、
人と会い、
笑って、
悩んで、
眠る。


けれど、ときどき不思議に思う。

こんなにも忙しく生きているのに。

なぜか、自分が自分から遠く離れているように感じることがある。


頭はここにある。

身体もここにある。

なのに、何かが遠い。


まるで、自分の一番大切な部分だけが、
どこか別の場所に置き去りになっているような。



グラウンディング。


それは、ただ大地に足をつけることではない。

「私はここにいる」

そう、身体に思い出させること。


意識を、頭の中から。

未来から。

過去から。

誰かの世界から。

自分の身体へ戻していくこと。


足の裏は、不思議な場所だ。

私たちが一生、地球に触れ続ける場所。


どれほど遠くへ行っても。

どれほど高い場所に登っても。


最後に私たちを受け止めるのは、いつも大地だ。



テラヘルツメーターに足をのせる。

すると、静かな時間が始まる。


何かを測るわけではない。

数字を追うわけでもない。

ただ、足元に意識を向ける。


その瞬間。


遠くへ行っていた自分が、
少しずつ戻ってくるような感覚がある。


まるで、身体の奥深くから声がする。


――もういい。

――こちらへおいで。

――ずっと待っていた。



そんな声が。



人は、人生の中で何度も自分を置き去りにする。


誰かに愛されるために。

期待に応えるために。

嫌われないために。

成功するために。

「こうあるべき自分」を演じ続けるために。


気がつけば、
本当の自分がどこにいるのかさえ分からなくなる。


でも。

身体は、知っている。


あなたが無理をした日も。

本当は嫌だったのに笑った日も。

「大丈夫」と言いながら、
大丈夫ではなかった夜も。


全部、身体は覚えている。


だから、ときどき足元へ戻る。

自分の身体に触れる。


そして、忘れていた自分を迎えに行く。



グラウンディングとは、
地面に縛りつけられることではない。

還る場所を思い出すことだ。


どこまで遠くへ行っても。

どれだけ迷っても。

どれだけ自分を見失っても。

還る場所は、いつも自分の中にある。


足元に意識を向ける。

深く息をする。

ここにいる。

私は、ここにいる。


そう思ったとき。

もしかすると、
大地のほうも同じように思っているのかもしれない。


――やっと、還ってきたね。



テラヘルツメーターに足をのせる朝。

私は、今日も自分を迎えに行く。


遠くへ行ってしまった私を。

誰かの期待の中に置いてきた私を。

忘れたふりをしていた私を。


そして、静かに思う。


私たちは、どこかへ行くために生きているのではない。

本当の自分へ。

何度でも。

何度でも。

還るために、生きているのかもしれない。


あなたも、少しだけ足元を感じてみてほしい。

もしかしたら。

あなたが還ってくるのを、

ずっと待っている場所がある。


あなたの、すぐ下で。